Two sides of the coin
〜ある晴れた日の朝〜










Back-side



のんびり過ごす休日も、悪くない。と思うけど。
どこか物足りなさを感じるのは。多分、知ってしまったから。

ぎこちない距離感でも。並んで歩く、心地よさ。
ちらりと目をやる先、照れくさそうにうつむく蒼い瞳。

別に、これといって特別な何かがあったわけじゃないけど。
それでも、その感覚は。一人でいる時間を退屈にさせるほどに、焼きついて。


あいつも今日は、休みだと言っていた。
でも、誘えなかった。

ただの独りよがりかもしれないこんな気持ち。
さらけ出すのはどこか怖くて。

押したり引いたり、駆け引きなんて、得意じゃないけど。
あいつに関しては、てんで臆病になる。

それだけ、もしかしたら。
いや、きっと。どうしようもなく、溺れてる。

そんなこと、考えてたら。ふいに声が聞きたくなる。
甘すぎないのに耳に心地よい、凛とした声。

勢いで手にした受話器。番号をプッシュして、耳に押し当てる。
少しの沈黙の後、響いたのは。
ツー、ツー、と、細切れな音。意味するのは、話し中。

はっと我に返って、慌てて受話器を置く。
もしあいつが出たら、一体何を言うつもりだったんだろうか。

どうかしてる。自分のことながら、呆れ返る事態。
落ちるのは、深いため息。


気分を変えて、出かけてみることにする。
天気もいいし、たまにはドライブも悪くない。

書店で本を調達してから、コーヒーでも飲みに行くか。
そういえば、この前あいつと行ったカフェ、書店のすぐ近くだったはず。

車のカギとタバコと財布。必要最低限の荷物。
ポケットに突っ込んで、そそくさと部屋を出る。

なんとかそれなりの、休日を過ごせそうだ。




…Front-side




2011.9.21





数ヶ月前、某所にて参加させていただいたチャットで話題になった『しのさらは運命だ!』に着想を得まして、別々に過ごしていても、どこかつながってる…的な雰囲気を目指してみました。

『Two sides of the coin』=『表裏一体』です。

ちなみにこの後の二人の行く末は…? …ご想像にお任せ、ということでv