照りつける太陽。

楽しげな歓声とともに、あがる水しぶき。

光を反射して、文字通りきらきら輝くそれを、
ぼんやりと見つめる。

夏の空気そのもののような、鮮やかなオレンジのパラソルの下、
申し訳程度にできた日陰に、身を潜めて。




Vivid




今日みたいな強い日差しは天敵。

お肌のため、それもあるけど。

基本的に季節を先取りして行われる撮影は、もう秋の装い。
小麦色の肌、というわけにはいかない。


「ダニエラ、来られなくて残念ね」

パラソルのポールを挟んで反対側、
手にした本に視線を落としている亮に声を掛ける。

「どうしても家の手伝いに戻るように言われたらしいから、仕方がないさ。
それに、たまにはこのメンバーで水入らずってのも、いいもんだ」

言って微笑む、亮が言うように、
みんなが集まるのは、久しぶり。

以前は、毎日のように顔を突き合わせていたのに、
今はそれぞれ、別の道を歩いているから。


「じゃ、先に5点取ったほうの勝ちね」
「よーし、行くぜ雅人!!」
「お手柔らかに〜」

波打ち際、ビーチボールはいつの間にか本気モード。

得点係のローラを挟む2人。

砂まみれでボールを追う姿はまるで子どもみたいで、
呆れ半分。微笑ましくもある。

無意識に、視線の先に捉えてしまうのは、
水と砂で重くなった黒髪をかきあげる、忍の姿。

みんなには、まだ言ってない。

別の道を歩くようになってから、
唯一、距離が近づいた。その人の。

前を見据える瞳。挑戦的に、上がる口角。


「わっ、忍、ちょっと待った!」
「待ったはなし!!」

砂に足をとられた雅人の隙をついて、
打ち込んだボールは、とす、と地面に落ちる。

「よっしゃぁ!」
「今のなしだって!もう一回!!」
「だ〜め。ちなみに雅人、あと1点でバツゲームだからね」
「えぇ〜!!ローラまで〜」

情けない声を出す雅人に、ローラと顔を見合わせて吹き出した。


本当は。
そんな無邪気な表情からは想像できない、
どきりとさせられる瞬間があること。

知ってるのは、私だけ。


帰り際に見せる、せつない表情。
私を試すような、ちょっと意地悪な瞳。
吸い込まれそうに見つめる眼差し。

髪に触れる指先も。
抱きしめて耳元に落とす、甘い息も。


ころころと、足元に転がってきたボール。
少し遅れて近づく影に、はっとして顔を上げる。

「あ…」

ばちりと合った目は、
まさに、少し意地悪そうに笑って、

「さっきからずっとこっち見てるけど、なんで?」

身をかがめた拍子、吹き込まれるかすれた声。
答えなんか、見透かしてるとでも言わんばかりの。

「…」

何も言えないまま、またその後ろ姿を見送ったけど、

「どうした?沙羅。顔が赤いぞ」

亮に指摘されるぐらい、正直に反応してしまう顔色は隠しようがない。

「あ、暑いから…」

とっさに返した声も、わかりやすく上擦って。



そんな私に味方するように、
真夏の太陽はいよいよ熱く、頭上に降り注いだ。




2009.8.12


お盆過ぎたら海にはくらげが出るという理由で(どんな理由だ)、
またしてもすべりこみup(もはや恒例化)失礼いたしました…;

今回のテーマは『沙羅ちゃんだけが知ってる忍くん』だったのですが、
なぜか『みんなに内緒のサークル内恋愛』みたいな雰囲気に…(笑;;)

BGMは、aikoの『夏にマフラー』でお送りいたしました。
それでは皆さまよいお盆休みを!!