目覚ましの音。ぴぴぴ、と。小鳥を真似て…でもどこか、ほど遠く。むしろいつもなら、苛立つ。けど。

   「あ?」

   …すっかり熱が、移ったシーツ。どこか、冷たいところを。探していたのか。いきなり壁と、ご対面。
   背後は、大きな窓。ベランダの下は、公園通り。始まる1日。週の中日。でも俺の、シフトは休み。
   かすかな優越感。時間は、確かめるまでも、ない。セットした時刻は、もう。よく覚えてるから。

   天井と壁の間。ブラインドの、合間。強い陽射し。…角度はまだ、高くはない。おそらくはいい天気。

   「…朝か、…」

   かすれた声。Tシャツは、パジャマの代わり。薄手のスウェット。ごろり、と。布団ごと、転がる。
   どっちを向いても、まぶしさは同じ。真下は通学路。はしゃぎながら、走る足音。梅雨の晴れ間。

   じんわりと、汗。朝から熱い、そして暑い。南向きの、大きな窓。ベッドは、狭い部屋の、ど真ん中。

   昨日も、帰って来たのは、遅かった。どっちかというと、日が回ってた。何となく、朝帰りに近い。
   でも、残業さえ。ものともしないのは。“今日”の約束を、してたから。楽しみに、待っていた。
   いつもなら、すぐ止めて。また、惰眠を貪る。貴重な休日。それよりもっと、貴重な。何というか…。

   ある意味、携帯を持ったら。目覚ましとか、要らない。かなり久しぶりに、鳴った。その音の合間。

   「…来た」

   わからないと、困るから。久々に、目覚ましへ出動指令を…とか。いいまわしは既に、職業病か。

   ぴかり、と。光る。イメージは、ピンク。…当の本人は、若干。恥ずかしがった。けど。俺が決めた。
   聞き覚えのある、音。ひっそりと、沙羅専用の、着信音。どうやらメール。わくわくしつつ、開く。

    “起きた?予定通りに、駅で待ってるね”

   絵文字とか。お互いに使う、主義じゃない。…一見簡素な、文章。でも、うれしくて。何度も、読む。
   待ち合わせは、沙羅の最寄り駅。マンションまででも、よかったけど。色々と、面倒が予想される。
   俺の、車で行って。ロータリーで拾う。予定の時間までは、余裕。どうやら沙羅も、準備済みらしい。

   「…」

   時間が経てば、画面が暗くなる。とりあえず、どこか。ボタンを押して。何度も、文章を眺める。
   腹ばいの、その姿勢。準備しないと、と。思いながらも。にやける表情と、べたついた指紋の痕跡。

   「って、うわぁあ!!」

   またごろり、と。転がれば。そこにはもう、ベッドはない。固い床。衝撃に、朝から。悲鳴を上げた。



                   夏の決心【つないだ指の、】                

  

   上り坂。エンジンは、快調な温まり具合。濃い木々の緑。高く昇り始める、太陽。背に受けて走る。
   空は青く、風はさわやか。典型的な、デート日和…なんてのが、あるのかどうかは、知らないけれど。

   初めてじゃ、さすがにない。でも、そうひんぱんでもない。お互い、忙しい身。休みが合うのも稀。
   …もう何度か。どっちかの…仕事の都合で、流れた。合間には、出張とか入った。久しぶりに、会う。
   わくわく…というか、どきどきというか。何でもない振りを、装うのが。何よりの証拠…だと思う。

   一段と、傾斜が増す坂に。踏み込むアクセル。フル回転。気に入って、買った型は。少し旧式。
 
   「…」

   何となく…まだ、腰も痛い。それはもう、教務部でも。上から数えた方が、早い年齢では、ある。

   朝っぱらから、落下して。下の住人には、悪かった…大音も、振動も迷惑そのもの…とは思うけど。
   よく、考えたなら。基本的に、生活は不規則で。俺の部屋の真下に、住んでることが。不幸そのもの。

   見えて来る駅。白い建物。隣のデリと、ネイルサロン。開店の準備中か。看板を出す店員。後ろ姿。
   オフィス街まで、1本で行ける、ロケーションと。整備された、街並みで。憧れの街、第1位の地名。
   ロータリーは、タクシー専用。通勤時間を、外せば。バスもまばら。するり、と。右カーブで進入。

   「…、…」

   探すまでも、ない。目立つ、赤い髪。白くて長い、手足。揺れるスカート。日傘の下、うつむく仕草。

   密かに、上げるスピード。他の誰かが、目の前に止まって。…かっさらわれたりしたら、俺が困る。
   ぴた、と。その足元に、停止する。サンダルの爪先。たおやかに、アスファルトへと、降り立つ。

   回り込んで、ドアを開ける…のまでは、わざとらしい。でも、荷物が多い。助手席へと、手を伸ばす。

   「よぉ」

   夜目遠目、傘の下とか。昔の格言。でも、どんな距離でも。何を持ってても。愛らしくて、目立つ。

   アイボリのパーカー。ワンピースは、長い裾。きれいな鎖骨の下、ネックレス。お揃いのピアス。
   ちらり、と。行き過ぎる、サラリーマン。営業風の、そいつの視線と。沙羅の肩越しに、ぶつかる。
   ぎろりとにらめば。おそらくは、恐ろしい俺の顔。わたわた、と。クールビズの、背中が遠のく。

   「…おはよ、…これ、お願いしてもいい?」
   「後ろでいいか?」
   「うん」

   挨拶も、そこそこ状態で。そっと、差し出す荷物。後部座席へ。そうしてる間に、沙羅が乗り込む。
   もちろん、女だから。ほぼ手ぶらでも済む、野郎とは違う。日傘に、バッグに。そして、もうひとつ。

   「…何だそれ」

   重めの、布バック。四角い底の形。プラスチックの、濃い色が透ける。ちらりと、横顔の、申告は。

   「お弁当、作ったよ、」
   「…マジか?」

   あらかじめ、好物とか。逆に、嫌いなもの…妙なもの以外は、何でも食べる…とか。聞かれてはいた。

   だから、何となく…予期はしてはいた。でも、実際は、生まれて初めての、事態。照れと、驚きと。
   士官学校は、砂漠のど真ん中。もちろん、女子はいたけど。少数だし。そんなことに、ならなかった。
   ただ…目の前の、沙羅は。あいつとの逢瀬に、何か…サンドイッチとか…作ってたらしい、と。噂。

   声が、変な思い出で。裏返ったらしい。きょとん、とした表情。のち、小さく笑い出す。その合間に。

   「マジも何も…嘘ついても仕方ないでしょ」

   おかしくてたまらない。そんな感じ、だろうか。シートベルトを、締めながら。笑いは止まらない。

   …沙羅にとっては、過去。うれしいような、ほっとしたような。でも、気取られたくない。その感情。
   ただ…何をしてても、何を見てても。過去には、敵わない。勝手な劣等感、どこか、捨てきれない。

   そんな、俺の気持ちを。あえて、吹き飛ばすように。まっすぐこっちを見る。まばゆい首元。瞳の光。

   「だって、食べるとこも少ないし…、遠いでしょ?」
   「そりゃそうだけどよ」

   ちろ、と。すねた目つきで。けん制してはみる、けど。逆効果。むしろさらに、ツボに入ったのか。

   「つかいつまでも笑ってんじゃねぇよ」
   「笑ってないよ、…、…うん、笑ってない」
   「何かむかつくな」

   むっとした、俺の表情に。さすがに声は、抑えて。でも、うつむく肩が、小さく。耐えきれず揺れる。
   何度か、失敗して。ようやく…かちん、と。金属音。きちんと、安全を確保しての、出発は鉄則。
   とりあえずいい捨てて。前方向へ、向き直る。これでもう、話は終わりだと。さりげなく、告げてやる。

   相変わらず、空いたロータリー。平和な光景が、バックミラーに映る。晴れた空と、白い雲。陽射し。
   ゆっくり、流れに合流する。出口は、左折と右折。行き先は、オフィス街とは、反対。左折のレーンへ。

   「安全運転、ね?」
   「はいはい」

   信号が、青に変わる。ハンドルを切れば、愛らしいお小言。吹かすアクセル。生返事で、走り出した。


                       *  *  *                  


   何度かの、休憩をはさんで。近付く、今日の目的地。ちらほらと、地名が。案内標識に登場してる。
   く、と。左折する。歩行者の列。しばし待つ。広い駐車場と、レストランと。自動販売機の列。屋台。
   …しばらくは、何もない道筋。むしろ、道路しかない。おそらくはここが、最後の。休憩ポイント。

   安全運転。その割に、時間に遅れはない。順調そのものの、道中。ちらりと、時計で。確認する。

   これが、野郎との…いわゆる“訓練”への、移動…なら。休憩とか、一切ない。一直線で通過、だろう。
   空いたスペース。頭から、突っ込んでも。出やすい好位置。ふは、と。エンジンを切って。安堵する。

   青い空。さわやかな風。平日の割には、高速は混んでた。飛ばせないストレス。なくはないけど。

   「…疲れた?」
   「まぁ、それなりにな…」
   「ちょっと混んでたもんね」

   お疲れ様、と。かしげる首。…その隣に、いる時間が。少しでも、長ければいい…と。思ったとか。

   …とはいえ、ずっとの運転だと。喉が渇く。それなりに、神経も遣う。ふと、自覚する。疲労感。
   ちら、と。目線をやるのは、缶コーヒー。冷たいブラック。停まるたび、ちびちび飲めば。空になる。
   ドリンクホルダーに、仲良く並ぶ。沙羅の分は、暑い今日も。どういうわけか、温かいミルクティ。

   「買って「買いに…」あ、悪ぃ」

   どうやら沙羅も、それに気がついた…らしい。ほぼ同時に、伸ばす指先。缶に行く手前。ふと触れる。

   一瞬の接触。しなやかで白い、手。日に焼けて、ごつごつした、俺のとは。造作からして、違う。
   まるで、弾かれたように。引っ込めてしまう。少し赤らんだ、頬。うつむく仕草に、思わず謝って。

   よくよく考えたら。謝る必要なんか、ない。もう少し“その先”まで。進んだ仲。照れる年でもない。
   なのに…、意識してしまうのは。色んな“過程”を、すっ飛ばしてしまって。ここまで来たからか。
   開いた窓から、そよ風。前を通る、人の群れ。好奇に満ちた瞳。車内で、この光景は。目立つだろう。

   何となく、雲行き…空のそれじゃなく…が、怪しい時は。合間に“何か”はさむ。思いついたのは。

   「…ついでに飯食うか?」
   「え、え、…いいけど」
   「場所取っとく」

   ひょい、と。後部座席に、手を伸ばす。確か…最近流行りの、ドッグランとか。公園が出来たと聞く。

   ドアを開ければ、真夏の陽射し。重い荷物。たぶん、ぎっしりの中身。味は、お墨付き。腹が鳴る。
   昼時には、少し早め。人波は、食べ物の屋台方面へ進む。そのまま行けば、…まだ空いてるはず。

   「じゃあ…お茶でも買って来る、ね」
   「あぁ」

   沙羅も、続けて降り立つ。若干のどよめき。有名なモデル兼デザイナー。存在は、知れ渡っている。

   かしゃかしゃ、と。最近は、携帯のカメラも、高品質。無遠慮に、向ける。操作音と、フラッシュと。
   ついて行ったら、それはそれで。また、目立って…トラブルの元だろう。アイコンタクトで、悟る。
   
   「…」

   どこか、苦々しい思い。照りつける陽光。じりじりと焦げて。形になるその前に。縮れてしぼむ。

   右と左へ、分かれて。ちょうどいい、日陰にベンチ。誰か、立ち去った直後か。ほんのりとぬくもり。
   なだらかな、芝生の丘。レンガ敷きの歩道。カーブの向こうは、ドックラン。にぎやかな鳴き声。
   弁当とか、おそらく。中学校の、遠足以来だろう。士官学校の実習時は。味気ない配給に、近かった。

   開けて見たい。すぐ隣の、トートバッグの中。ふたり分の、玉手箱。…白い煙が出たら、嫌だけど。

   ほんのわずかに、ファスナーを開ける。銀色の裏地。大きめの、弁当箱は。密閉が出来るタイプ。
   何となく、ひんやりしてるのは。傷むのを、防止するためか。短めのカトラリー。赤のプラスチック。

   「…」

   手を、ひざに。口はチャック…というか、ひとりでしゃべってたら、変だろう。かしこまって待つ。

   「何でそんな格好なの?」
   「…何となく?」
   「おなか空いてたら、食べててよかったのに…、」

   しばらく、辛抱の時間。その後、声に振り向けば。立っている。沙羅。何となく、すまなさそうな顔。
   両手にお茶の、ペットボトル。すんなり長い脚。ワンピースの裾が、揺れて。ベンチの隣に、座る。
   少しずれる、身体。出来るだけ、沙羅が。日陰に入れるように。うっかり日焼けは、怒られるらしい。

   ぱこ、と。鈍い音で、開封。ふわりと、食べ物…混じり合っても、美味…の匂い。鼻をかすめる。

   日本人は白米、と。力説したからか。握り飯は、容器に沿って俵型。海苔は別包装。湿気防止。
   卵焼き。鳥の唐揚げ。隣はエビフライ。きゅうりと人参。食べやすい棒状。ほうれん草のごま和え。

   凝っては、いないけど。基本的に、食べやすさ優先の。日本人には、かなり親しみのある、献立。

   「…どう?大丈夫そう?」

   心配そうに、のぞき込む。大きな瞳に、うなずけば。安堵の色。元から、料理は上手。知ってるけど。
   手を合わせるのは、当然の礼儀。というより、正午近く。目の前に食べ物。これはもう、行くしか。
   そのまま、ダイレクトに。握り飯…菜飯としそがある…に、手を伸ばそうとして。慌てて止められる。

   「ちょっと待って」
   「…何だ?紙は食う気ねぇぞ、ヤギじゃないし」
   「って、…手拭いてないでしょ、もう」
   「あ、そっか」

   突き出される、ウェットティッシュ。そのままじゃ、取らないと思ったのか。1枚、強引に渡される。

   きれいに拭いて、今度こそ。一番に行くのは、やっぱり握り飯。細く切った海苔。ぱりぱり巻いて。
   いい塩加減。もぐり、と。奥歯で、しっかり噛み締めれば。徐々に甘さを増す。日本人の、幸せの源。

   いろんな国に、出張するけど。何を食っても、基本は。白米じゃないと、何となく、もの足りない。

   その合間に。おかずに、箸が添えられる。握り飯を置いて、今度は卵焼きへ。王道のやわらかさ。
   沙羅の味付けは、少し甘め。実家の…というか料理人の…味は、だしの味。普通の家のとは、違う。
   もうひとつ、行こうかと。考えていたら。じっと、こっちを見てる。…つか、俺だけが食べてる。

   箸の進路変更。さくさくの唐揚げ。茶色は地味だけど、安心感がある。しょうがの風味。王道だろう。
   すかさず、きゅうりで。油っぽさを中和する。エビフライの後で、人参。ほうれん草は癒やし役。

   そうは、感じさせないけど…朝っぱらから、かなり。手がかかったと、思う。沙羅を、労うためには。

   「…お前も食えよ」
   「うん、」

   うまいとか、いうよりも。…がっつリ食べることが、何よりだろう。既に握り飯は、ふたつ目の。
   促せば、慎ましく。箸に手を伸ばす。基本的に、食が細い。忙しいと、きちんと。食べない時もある。

   残った握り飯を、再度ほおばる。他に入ったおかずを、引き立てる。安心感のある味わい。定番。
   俺が握れば、たぶん。もっと巨大化するはず。小さな手にふさわしい、控え目サイズ。しっかり噛む。
   …咀嚼の合間に、ちらりと。沙羅を見る。同じ握り飯。…沙羅が持つと、なぜか。大きく見える。

   明るい空の下。ちょうどいい日陰。さやさや、と。風が吹く。少し暑い。でも気持ちいい、昼休み。
  
   「…、…」
   「いい天気だね」
   「あぁ、…」

   食事の最中。口数は、どうしても少ない。…それ以上に、まったりとした空気に。包み込まれる感覚。
   付き合いは…知り合ってからの、年月から考えると…長くはない。でも、安心出来る。そんな存在。

   ぽつぽつ、話しながら。徐々に食べ物が、なくなっていく。もちろん、食う量は。較べるまでもない。
   人参のスティック。両手で持って、ぽりぽりと食べる。沙羅。まるでウサギ。野菜が好き、らしい。
   …逆に俺は、案外と。甘い卵焼きが、気に入って。ほとんどたいらげた。今後もたぶん、これで頼む。

   ぐび、と。最後の締めはお茶。全ての後味を、すっきりと流す。満足のため息。そして礼儀として。

   「ごちそうさん、」
   「お粗末さまでした…あ、それもらうね」
   「悪ぃ」

   合わせた両手。その中の箸。すぅ、と。片付けられる。空になった容器に、蓋をする。細い指先。

   とりあえず。後は任せる…手を出さない方が、早いだろう…と、いうことで。邪魔をせずに、見守る。
   目的地は、まだ少し先。何となく、立ち上がって。背筋を伸ばす。…ぽきぽきと、身体が鳴る音。

   道の先。高速は、混んでいる。きらきら、と。車のボンネット。白く反射する、光。群れ立つ波の色。

   どうやら、支度が終わって。沙羅も立ち上がる。弁当の入ってた、トートバッグ。軽いけど預かる。
   片手に、日傘の花が咲く。陽射しを遮って。薄い影は、アイボリ色。肩掛けのかばん。サンダル。
   歩きやすさ重視の、今日の装備。やわらかな風。ワンピースのすそが、さらさらと揺れる。白い足首。

   「ごめんね、お待たせ」
   「じゃあ、…行くか、」
   「うん…でも、えーと…」

   そのまま、歩き出そうとして。ふと、差し出す手。沙羅の手は、少し低い位置。戸惑ってる動き。

   いつもなら。混乱を避けるため…沙羅が、気にするのもある…に。人前では、手とか。つながない。
   今も、これから。人ごみの中、車へと戻る。さっきの、フラッシュや、好奇の目線。記憶は生々しく。

   それでも、戦う覚悟…堂々としてるだけ、だけど…はもう、出来ている。それが過去でも、同じ。

   「…忍、…」
   「何だ?」
   「いいの?…、…」

   少し低い位置。青色の瞳。長いまつげ。瞬いて、揺れる。白い指先。ぎゅ、と。無言で握り締める。

   「…」

   色んなことがあって。離れて、傷つけて。それでも、たまたま。再びつながった、指先の、奇跡。

   かぁ、と。うつむいて、染まる頬。…日傘の陰に、隠れる。歩幅は小さめに。まっすぐ前を向く。
   歩き出せば、ゆっくりと。ざわめきが近くなる。たくさんの数の、ギャラリー。目を丸くして。
   アスファルトの、照り返し。車の列。絶え間なく入れ替わる。守るように。俺の方に、引き寄せる。

   「離すなよ、」
   「…」

   かすかにうなずいて。目が合わない時は、照れている。わかってるからこそ。言葉でちゃんと告げる。
   むしろ、俺がもう、離さない。夏の小さな決心。真昼の陽射し。今度はまばゆく、胸に焼きついた。


   《終》



NAKAの隠し部屋・乙女堂本舗【Reboot】NAKAさまより
お誕生日にいただいたSSを公開させていただきましたv
お誕生月しかご存じないはずなのに、ジャストお誕生日に送ってくださって、びっくりでした!

もう、もう、がっつり萌えのぶぅにとってはど真ん中ストレート!なお話に、ニヤニヤが止まりませぬv
その他にも、メールを何度も確認する忍くんとか、ウェットティッシュを渡してあげる沙羅ちゃんとか、
随所に萌えポイントが散りばめられてて、まさにご飯3杯いける感じです!
(おいしそうなお弁当描写にお腹が空いたという説もありw)
NAKAさまによれば、こちらのお話『おうちへかえろう。』の 前段階のふたりということで、
忍くんの決心は、これから先の幸せな二人に続いているのですね。なんだか嬉しくなっちゃいますv

NAKAさま、ステキなバースデープレゼントをありがとうございました。
こんなステキな贈り物をいただけるのなら、歳を取るのも悪くない…とか思うゲンキンなぶぅでした(笑)

2011.6.20