カーテンの隙間から、差し込む光。
どうやら今日は、梅雨の晴れ間、らしい。

心地よい気だるさが、じんわりと体を包む。
甘い痺れを味わいながら、ごそごそと身動ぎ。
すぐそばにある逞しい鎖骨に、頬を寄せた。




sanctuary




誕生日には何がほしい?

なんて。
よくある他愛もない質問。

まじめな顔して、

お前。

とか言う人が、まさかホントにいるなんて思わなかった。

それ以上に。
リクエストに、答えてしまった。そんな自分のほうが、信じられないけど。


『ホントに…いい、のか…?』
『今さら何言ってんのよ、』
『だってお前、震えて…』
『も…っ…ほっといてっ…』

昨夜の、やりとりは。
笑っちゃうぐらいぎこちなくて。

でも、その目は。その指は。その唇は。
信じられないぐらいに、優しくて。

触れられた感触。蘇って。慌てて振り払ったけど。
きゅん、と疼く胸。熱くなる頬。こみあげる幸福感。
プレゼントされたのは、どっちなんだか。

少し見上げれば、瞼を縁取る長いまつげ。
鋭い瞳は。それだけに。閉じると、とびきりあどけなくなる。
多分、忍本人は知らない。

同じように。
昔から、突っ張った態度。反抗的な口調。その裏には。
誰より優しい、繊細な一面。
私がどれほど救われたかってことも。


『愛してる…』

押し寄せる熱に苛まれながら、確かに聞いた言葉。
手放す寸前の意識の中、返事はできなかったけど。

「私も、…愛してる」

ぽつり。今さらながら、独り言のように呟いてみる。
少し、震える語尾。


何年越しか、なんて。
考えるだけでもイヤになる長い年月。

遠回りして、時には立ち止まったり、引き返したりも、した。
踏み外しそうになったことだってあった。

それでもようやく、たどり着いた。誰にも邪魔されない温かな場所。

私にとって、そうであるように。
忍にとっても、そうであってほしい。


と、ふいに。体を包み込む腕。びくりとする。
見上げた先、寝ているはずの口元は、少し微笑んで。

「起きてる、の…?」
「いいや、」
「起きてるじゃない…」
「でも、お前がなんか言ってたのは、聞いてない」
「…聞いてるんじゃない…」

にい、といたずらっぽい笑み。
恥ずかしさに、染まる頬。

「もっかい聞かせろよ…」
「もぅ…」

いじわるな視線、注がれたら、躊躇してしまうけど。

忍になら。
私の全部。
見せたっていい。見てもらいたい、から。

真っ赤な顔も、潤んだ瞳も。
全部さらけ出して。

その耳元に、唇を寄せた。


「…サイコーの誕生日、だな」

忍は。

そう言って、幸せそうに笑って。
また、私を抱きしめた。




2012.6.8



2012年忍くんお誕生日SS、何とか無事にupすることができましたー!

えーと…今回の話、白熱後最初の誕生日、設定です。
そしてぶぅ的には、二人がこう(どう?)なった最初…です。
白熱のレース場でとか、(自分の作品で恐縮ですが)『罪と罰と〜』の最後とか、
そういうチャンス(?)をことごとく寸止めスルーして、ここまで来ちゃう不器用な二人であってほしいです(希望?!)

短いし、リハビリ感いっぱいではありますが、なにより完成させられたことで、しのさらに対する熱い思いはまだまだ健在っ!と本人が自覚できましたので、よしとします(自己満足かよぅ!)

今年の忍くんの誕生日は、しのさらファン的には寂しい日となってしまいましたので(多くの皆さまが同じ気持ちなのではないかと…)少しでも幸せ感じていただければと思います。(こんなやや裏裏しい(でも裏じゃない)話でアレですがw)

皆さまのご期待に沿えるかどうかはわかりませんが、これからも幸せオーラ全開サイト目指してがんばります!