これ以上にないぐらいの晴天。

降り注ぐ日差し。穏やかに。


今日の二人を、きっと祝福してくれる。




be happy




厳かな式。さすがにその間は我慢したけど。
終わればいつものバカ騒ぎ。ガーデンパーティー風の、披露宴。

新郎は、悪友たちに囲まれて。からまれたり、飲まされたり。
ぎゃあぎゃあとじゃれあって。

そんな姿を遠目に見る。私は。
純白のドレス。職業柄、普通の人よりは着慣れてる。とはいっても、動きにくいのは必至。
騒ぎに加わるわけにもいかず、空を仰ぐ。やっぱり、晴天。まさに。

「まさに、飛びたくなるような空、ってな」

隣からの声は亮。
私と同じく向こうには参加してない。理由は違うけど。

「ようやく、だな」

言って、目を細める。


何年か前の。ちょうど今日と同じような好天の日。亮の、門出の日。

あの日から、私たち二人は始まって。
長い長い年月。進んでは戻りを繰り返して。今日を、迎えた。


「忍のやつ、最高に幸せそうだ」
「うん…」
「沙羅、お前もな」
「…うん…」

改まってかけられると、どんな顔をしていいかわからない言葉に、
また、前を向くと。

ふいに、目が合ったと思ったら、つかつかと歩み寄る。
その姿。いつもと違う、タキシードなんて着てるけど。

いつもと同じ、高い青い空が似合う、その人。

「どうしたの?忍」

今の今まで騒いでた場所、いきなり抜け出したから、
不思議になって尋ねると、

「いや、お前…すげぇ、きれいだ」
「なっ…」

隣の亮も、思わず目を丸くする。そんな言葉。臆面もなく。
ざわめく周囲。もちろん、好意的なざわめき。だけど。

「…もぅ、何言ってんのよ…」

みるみる赤らむ頬。
ステージは平気だけど、こういうの、実は慣れてない。


「お二人さん、1枚いいですか〜?」

おどけた口調で、カメラを構えたのは、雅人。

今日のためにカメラ新調した、なんて言ってたけど。
ホントは知ってる。それだけじゃないって。

隣で微笑むローラ。少し、お腹が目立ってきた。

「おう、バッチリ撮れよ」

抱き寄せられて、また、熱くなる顔。
カメラ目線だって、お手のもの、のはずが。

「ちょっと、沙羅ぁ。表情硬いよ〜」
「だって…」
「いいから笑って笑って…あ〜忍じゃなくて沙羅ね」
「なんだよ!」

一気に騒がしくなる周り。
戸惑って、見上げると、そこにある笑顔。
太陽にも負けず、まばゆく映る。


幸せになるのが怖いと、思ったときもあった。
でも、そんな私の背中を押すものがあった。

ここに集まってくれたみんな。

いつも気にかけて、見守っていてくれた亮。
からかうふりで、応援してくれた雅人。

そして。すべてを受け止めてくれた、愛おしい人。


「忍…幸せに、なろうね?」

こんな風に言える日が来るなんて、思ってもいなかった。

「そんなもん、俺がいくらでもしてやるよ」

シャッターが切れるのを待って、強引に奪われた唇。
甘い、さっき飲んでたシャンパンの味。幸せの、味。

「あー!シャッターチャンス逃した〜!!」

悔しがる雅人に。

「俺の特権だからな」

勝ち誇ったような、笑み。


騒ぎ出す周りをよそに、
唇に、まだ残るやわらかな甘さを、ゆっくりとかみしめた。




2010.8.26



イラストを描きながらふっと思いついたので書いてみました。
これまで恋人関係(もしくはそれ以前)の2人しか書いたことがないので、
なんだか親(?)心としては、感慨深いものがありますね〜。
先に最終回を書いてしまったような気分というか。

いろんなことを乗り越えて、すべてが終わった後に待っている幸せの日。
こんなハッピーエンドを目指して、これからもがんばっていこうと思います!(まだしばらく『エンド』は来なさそうですけどね!)