やっぱり。 こういうことって、あんまり得意じゃない。 オーブンの中。 思った以上にふぞろいに焼けたクッキーたちを見てると、ため息も出る。 その中でも一番不恰好な一枚を、ぱくりと口の中にほおりこんだ。 でも味は、 そんなに悪くない。 十分にさめたら袋につめて、リボンで飾る。 やっとできたと安堵のため息もつかの間、 時計を見ると、出発の30分前。 きれいなオレンジ色のワンピースに、ベージュのコートは今年のお気に入り。 ブーツは2足のうち、迷ったけれどもかかとの高いほうに決めた。 今日の気分みたいに、ちょっぴり背伸びして――― 左手に下げた紙袋には、 ぎりぎりで出来上がったクッキーと 小さな小さな贈り物と それにこめた、メッセージ。 気持ちが逸ってついつい小走りになるけど ただでさえ不恰好なクッキーを思い出して、 また歩調をゆるめる。 これ以上形が崩れたら大変。 約束の場所。まだキミは来てないみたい。 キミの姿が見えたら、最初の言葉は決めてある。 今日は特別な日。 特別な日の 特別な一言を。 人ごみの中から見え隠れする見覚えのある顔。 約束の時間まではまだ5分あるのに、 先に来ている私を見て、ごめんと一言。 キミはそんな人。 そんなキミの、特別な日。 それは私にとっても、特別な日。 手を振って、笑顔で迎えて。 特別な一言を――― Happy Birthday To You…!! 2008.2.1